【短編】とじようの現実郷

エッセイと俳句。 最近はたまに小説。 人質を解放してください。

人気者だと思ってた

幼稚園の頃、母親が私と接する時と友達の母親たちと接する時の対応が違うと思った。平等に接されていないだとか真面目に相手にされていないと感じでいた訳ではない。何故かそれは自分が情けないというか寂しいというか悪いことのように思えた。特に気になったのは笑い声である。私がとても面白いと思って発したことはニコニコするだけのくせに、母親が大人たちと会話していると、意味のわからないことで皆大声を出して笑っている。

集合写真を撮る機会があり、フィルムカメラを触らせてもらった。片目だけを頑張ってつむり、ファインダーを覗くと、小さな人間が沢山いるのが面白かった。とても夢中になったが、壊すといけないからかすぐに取り上げられた。将来はカメラ小僧やな、などと言い合い、母親たちは僕を見ながら大声で笑っていた。母親を自分の話で大人たちと話している時のように笑わせたいと思った。

クリスマス前にリビングで母親と過ごしていた。

私(21)は言った。

久しぶりにサンタさんに手紙でもだしてみよっかな。

母は大声を出して笑った。めっちゃくちゃにウケた。