【短編】とじようの現実郷

エッセイと俳句。 最近はたまに小説。 人質を解放してください。

2021-01-01から1年間の記事一覧

ハンドソープ

指を弄るのが癖だった。 さかむけが気になってはちぎっては投げ、秒針を見つめてはさかむけを毟る。割れた爪を剥いてはゴミ箱に飛ばし、2枚爪を剥がしては息を吹きかけていた。 高校生の頃この癖をどうしてもなおしたかった。血が出ることも少なくなかったし…

凍て風や千代に八千代に続くのか

句会テーマ 飛行機

極楽で枯葉が落ちたと確信し

着ぶくれて電車の隅に横たわり

浮いた歯でビル風を噛むクリスマス

昨晩歯磨きをしたかということばかりを考えている。

朝が極端に苦手だ。どのくらい苦手かと言うと、ミニバスの大事な試合があるのにも関わらず、起きるのが嫌という理由だけで休むくらいである。 朝かよクソがと思うくらいである。 起きてすぐ死にてーと思うくらいである。 今日くらい休んでもなんとかなるやろ…

駅を出て今日は冬至と人づてに

早回しの第八芸術

街灯の光とともに降りる蜘蛛

レンゲの持ち手にスープが上がってくるような心地だ

過ぎ去りて思い出せぬは金木犀

夜なべしてられなくなったら死になさい

睡眠の逆算だけが人生や

べべを買う

友人や先輩とお洋服を見に行くのが好きだ。特にここ数年は古着屋に入り浸っている。 インターネットで探せば好きなデザインの服は見つかりやすいし、いつでも見られるので便利である。でもやっぱりサイズ感や色味、質感が分からないし、届いてからイメージと…

秋の暮れもう観た映画の予告編

蜜蜂が地に落ちて胎児になりにけり

きりぎりすもしも時間が戻せたら 句会テーマ 時間

人はみな黄昏時にシャッターを 句会テーマ 黄昏時

秒針とさかむけ交互に見る永夜

歯ブラシを落として拾う春愁

居間の中これは秋思か別物か

枝豆の皮を置くのはそっちじゃない

運動会心拍高く空高く

誰がために古着を羽織る捨案山子

金魚鉢甘いと思って舐めてみる

鼻ぢょうちんの金曜

養蚕時へらせるだけへらせ小おかず

以下同文ばかりの表彰鉄格子

レコードの回る温帯低気圧

みるな蒙古斑