【短編】とじようの現実郷

エッセイと俳句。 最近はたまに小説。 人質を解放してください。

なんか新聞配達に投稿したやつ

眠れない夜がある。それは誰もがそうであるように、暗くて、不安で、憂鬱なものだ。秒針と天井を交互に見つめ、前髪をかきあげる。眠たくない。指の爪を見つめ、寝るということについて考える。この世界にはもう自分しかいないのだ。次第に考えることの規模が大きくなってゆき、宇宙人や陰謀論に怯える。まだ眠れない。たいして好みでもない柄の布団に挟まれながら、次の日の予定について考え、より暗い気分になる。静かすぎる窓の外はもうだんだんと明るくなってきており、まだ誰も吸っていない空気が充満しているのだろう。罪悪感と焦燥感に押しつぶされそうになる。そんな日にいつも私を救ってくれる音がある。それは新聞配達のバイクが疾走する音。人類滅亡まで考えていた私は、朝刊を配るバイクの音で安堵する。新品の空気を切って走るバイクの音は心地よく、地球には自分以外の人間がおり、今も働いているということを実感させる。新聞配達をしている人のおかげで、今日も私は眠りにつけそうだ。