【短編】とじようの現実郷

エッセイと俳句。 最近はたまに小説。 人質を解放してください。

劇場版

人を家に招待すると帰った時の喪失感が耐え難いので嫌だと1年前に投稿した。「おもてなし」参照

 

それとは逆で、グループでどこかに遊びに行った場合には、帰りに徐々に人数が減っていくという現象が起こる。

私はそれがたまらなく好きなのである。

普通別れとは寂しいものであり、楽しかった集まりほど帰りたくないものであると思う。でもそういった別れほど愛おしいと思う。ただ家が好きなだけという部分もあるが、程よい喪失感というか、あの時の空気感が好きである。オール明けだとなおいい。

私が電車で帰宅する時はほとんどの場合、最寄り駅の関係で、最後まで車内にいる。なので一人一人にお別れを言い、半日ズレた人たちの背中を見送る。なんというか、ドラえもんの映画のエンディングみたいな感じと言おうか、単発長編作品にしか出てこないキャラクターへの愛のような、ひと夏作品のような余韻を味わうことが出来るのが好きなのである。遊びは全て劇場版なのだ。

ワクワク感は予告に勝ることはないが、行ったら行ったで余韻があるほどに楽しい。直前にやっぱりめんどくさくなったりすることもあるが、数時間後にはそんなこと全く覚えていない。

同じ日は二度とないなんて安い文言で終わらせたくは無いが、全力で楽しんだ後、愛おしい余韻で皆を見送りたい。